月刊Amusement Japan11月号 特別寄稿掲載!!

月刊Amusement Japan11月号に弊社、代表取締役 桐山満啓の特別寄稿記事が掲載されております。
計3回掲載の第2回目です!

aj201511
〜以下本文〜

特別寄稿 迫られる業界改革

長年パチンコ産業に従事し、現在は海外のリゾート開発やマーケティングに携わるグリーンヒルズJAPAN 代表取締役社長の桐山満啓氏。海外レジャーの実態も熟知する彼の眼に、パチンコ産業はどう映っているのか。特別寄稿第2回はパチンコ産業の在り方について考えたい。

第2回 パチンコとカジノの対比

政府の財政再建策のひとつとしてIR事業が挙がっている。メリットは、国内外から観光客を誘致できること。カジノ税収入による新規財源の創出。雇用促進がもたらす地域の経済活性化などだ。特に外国人観光客や外資を取り込むことは日本経済の再生につながる。
一見、パチンコ産業には関係ないように見えるこの事業だが、実は大きな影響を及ぼす取り組みである。IR事業をするうえで必要なのが、現在刑法で禁じられているカジノ運営を厳格な条件の下で許可するIR法案の成立。この法案こそパチンコ業界にとって問題なのだ。IR法案の成立には賛否両論ある。財政面での利益をもたらす一方で、ギャンブル依存という問題等も生み出すからだ。この懸念から慎重論を唱える人も少なくない。
日本のIR事業に参入したい外資系企業は、パチンコとカジノは同じ社会的コストを孕んでいると指摘する。パチンコ事業は許可するのに、なぜIR事業は許可されないのか。IR法案の成立が長引けば、外資によるパチンコ産業に対する風当たりも強くなる。パチンコ業界は今、産業の在り方を世論にしっかりと示す必要があるのだ。
パチンコとカジノを比べてみたい。世間からみたパチンコ産業のイメージは、お世辞にも良いとは言えない。ではカジノのイメージはどうだろうか。日本人が連想するカジノはギャンブル色が強いが、欧米やアジアなどのカジノは、しっかりと整備されたルールの下、ハイクラスな文化的社交場として捉えられている。なぜならカジノはセキュリティーの強化による違法性の排除や依存症対策の充実などのプレイヤーケアに、自ら資金を投じて行ってきた歴史があり、安全で健全な環境をつくる努力をしてきたからだ。カジノは既に140の国と地域、4000以上の施設で運営されている世界的にも認められた産業なのだ。
カジノ議論がすすむとパチンコ産業は一番比較しやすい日本の既存産業として世界中からフォーカスされる。依存問題や犯罪防止、安全対策など社会的責任をどのように果たしてきたのか。法令順守に対する意識と取り組みはどうか。それは押し寄せる外国人観光客やSNS等を通して一斉に問われることになる。
現状、組合や法人単位で個々に寄付活動を行っているが、肝心のパチンコユーザーに対するケアはおろそかで足元が固まっていない。車いす等の寄付ももちろん大切だが、パチンコ依存者への支援活動こそ本流の支援対策ではないだろうか。カジノでは依存者に対して「事業者」「本人」「親族」による排除システムや専門医による治療体制が整っている。また、公務員やカジノ事業会社の社員はカジノプレイが禁止されている場合が多い。スタッフ教育も徹底されており、プレイに熱が入りすぎているお客様には、食事やショーを勧めクールダウンしてもらう心理学や顧客誘導の社員研修を設けている。加えて表2からもわかるように、業界全体の犯罪防止や安全対策、法令順守における意識が非常に高く積極的に取り組んでいることが理解できる。
これらを参考にパチンコ業界でも積極的法令順守を掲げ、①依存症対策への更なる取り組み ②入り口で年齢確認を行い18歳未満は絶対に遊技させない ③玉やメダルの持ち込みや持ち出しが不可能な遊技機の製造や運営体制の整備 ④違法遊技機設置不可能な仕組みの形成 ⑤第三者から見てわかりやすい景品交換システムの構築など、社会的コストを明確に負担する姿勢を示すべきである。果たすべき責任をしっかり果たし、その上で遊技客に支持される時代に合った規制緩和を唱える事が未来に繋がるのではないだろうか。今までの延長線上に将来は見いだせない。
「グレービジネス」「脱税」のイメージから脱却して社会に貢献できる産業に進化するきっかけとして、IRビジネスやカジノビジネスから多くの事を学び実行していただくことを心より願う。
次回はパチンコの新しいビジネスモデルを提案する。

表1 公営競技と宝くじの比較表

法律 年齢制限
パチンコ 風俗営業等の規制及び適正化等に関する法律 18歳未満
競艇 モーターボート競争法 20歳未満
競輪 自転車競技法 20歳未満
オートレース 小型自動車競走法 20歳未満
競馬 競馬法 19歳未満
スポーツ振興くじTOTO スポーツ振興票の実施等に関する法律 制限なし
宝くじ、ロト6、BIG 当せん金付証票法 18歳未満

表2 パチンコとカジノの違い

パチンコ カジノ
セキュリティー 監視カメラ、目視、PC確認が主流のため「玉・コインの持ち込み行為」「ゴト行為」「マシンの違法改造」「未成年の立ち入り行為」などを100%防止できていない。 プレイヤー、スタッフ、取引業者のボディーチェック、ID提示及び事前審査により不正防止策が施されている。チップはICチップを使用。第3機関の常駐。
プレイヤーケア 依存症対策、青少年健全育成対策、マネーロンダリング対策が不十分。 依存症対策において自己・親族・事業者排除プログラム、公衆教育プログラム、専門的医学治療体制の整備が進んでいる。資金面での支援もある。
換金 換金は認められていないが、実態は乖離している。制限はあるがポイント利用可。 換金可。ポイントを飲食や宿泊で利用できる。
就労ライセンス制度 特にない。 取引業者、関係者、スタッフの背面調査をする検査機関やライセンス制度がある。現地スタッフを95%以上採用しなければならない等の規制事例もある。
営業ライセンス数 ライセンス数に制限はない許可制度。 正規・準ライセンスの数や開発数、外資参入条件など厳しく制限されている。
売上規模 約20兆円規模。 世界で約20兆円規模。
入場制限 18歳以上 21歳以上(韓国は19歳以上、ヨーロッパ18歳以上)
パチンコとカジノは共通の社会的コストが存在している
1. 安全の確保、犯罪や治安に関するもの
2. 青少年教育に関するもの
3. 過度の賭け事の抑制、依存症対策に関するもの

 

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