月刊Amusement Japan10月号 特別寄稿掲載!!

月刊Amusement Japan10月号に弊社、代表取締役 桐山満啓の特別寄稿記事が掲載されております。
計3回掲載の予定です。随時アップしていきますのでお見逃しなく!

aj201510
〜以下本文〜

特別寄稿 迫られる業界改革

長年パチンコ産業に従事し、現在は海外のリゾート開発やマーケティングに携わるグリーンヒルズJAPANの桐山満啓氏。海外のカジノ事情も熟知する桐山氏の眼に、パチンコ産業はどう映っているのか。「長年お世話になったパチンコ産業への恩返しの意味も込め、私なりに業界に提言したい」という思いをつづった。今後業界はどうあるべきか。パチンコ産業の歩むべき道を3回に渡って掲載する。

第1回 政府と外資の視線

2015年、パチンコ産業は混迷を極めている。業界では、ユーザーのパチンコ離れが深刻化、加えて遊技機の射幸性の問題や釘問題など課題が山積だ。これまでも現状を変える対策は講じてきたが、依然として活路を見いだせないでいる。老舗の大手企業でさえ大幅なビジネスモデルの転換を強いられている中、パチンコ産業だけ古い体質のままでいいのだろうか。変わるべきだと思う。長く業界に携わってきた者として、これからの業界の在り方を提言したいと思う。
政府の経済政策アベノミクスは、長期にわたり停滞を続ける日本経済の現状を打破しようと打ち出された。円安を誘導する金融緩和、環境やホスピタリティーなどのノウハウの輸出、政府主導による中小企業の世界進出促進などは、多くの成果をあげてきた。
だが、パチンコ産業は、政府政策による恩恵をまったく受けていない。原因は、業界の古いビジネスモデルにある。1980年のフィーバー機登場から約30年。大きな技術革新はなく、ビジネスモデルは疲弊。ホールもスタッフへの教育を強化するなど、サービスの向上に努めてきたが、ホール単体での取り組みはそろそろ限界が見え始めた。95年に約2900万人いた遊技人口は、15年現在で1000万人を割るような状況だ。まさに今、パチンコ産業は生き残りをかけ抜本的なビジネスモデルの転換を迫られている。
業界再編を考える上で注目したいのがIR事業だ。IRとはカジノを含む統合型リゾートのこと。マカオやシンガポールに代表される統合型リゾートは、国際的な観光拠点として成功を収めてきた。
IR事業のメリットは、国内外からの観光客を誘致できること。カジノ税収入による新規財源の創出。雇用促進がもたらす地域の経済活性化などが挙げられる。少子化による人口減少が進む日本において、訪日外国人を集めるIR事業は、現状経済再生のための最も有効な財政再建策のひとつだといえよう。
IR事業に次いで注目したいのが、202 0年に迫った東京オリンピック。政府は、世界的に高い評価を受けている観光資源や日本文化を売りに、20年までに年間3000万人の訪日外国人観光客数を目指している。

2020年東京オリンピックがもたらす業界への影響

政府はIR事業と東京オリンピック開催によって起こる、大規模な外国人観光客の増加と外資の参入を経済再生の起爆剤として捉えている。パチンコ産業もこの動きに乗る必要がある。パチンコ産業の市場規模を拡大するまたとないチャンスだからだ。
予想される流れと業界の影響はこうだ。まず外国人が日本に押し寄せ、外資参入が進む。波に乗りたいパチンコ産業は、パチンコの遊技性を世界にアピールする。ここで間違いなくクローズアップされるのが3店方式などの制度問題やギャンブルと遊技の線引き問題だろう。
この問題は幾度となく議題に挙がってきた。だが、業界は現状に甘え結局のところ根本的な問題点の改善を先延ばしにしてきた。これまでは、国内での問題だった。もっと言うと業界だけの問題だった。だが今度は違う。政府が外国人観光客の増加と外資の参入を経済再生の道筋としている以上、待ったなしで制度の明確化及び時代にあった風適法の整備が求められる。
政府は海外とのトラブルを回避するため、本腰を入れて国内産業の改革を進めている。パチンコ産業は近い将来、政府及び海外諸国から制度の鮮明化を求められることになるだろう。事実、海外のカジノ事業者などからはパチンコはギャンブルと捉えられ、法令順守の認識が甘いとされている。業界ではパチンコは遊技と位置付けしているが、海外目線からするとパチンコもカジノと同じ要素を孕んだもの。既に世界中のカジノオペレーターが取り組んでいるように、パチンコ業界は依存症問題に一丸となって取り組む責任がある。制度設計や資金の捻出を継続的に維持し、更には様々な依存症対策を行えるように異業種と協力することが求められている。

日本基準から世界基準へ迫られる変革

歴史を振り返れば、日本の産業は外資の参入と共に進歩してきた。エネルギーや自動車産業、IT産業などは代表的なところだろう。それだけではない。国鉄や電電公社、郵政、音楽業界に至るまで、日本の巨大産業は時代の流れに合わせて政府主導で改革を迫られてきた。そして、世界基準の産業へと変革を遂げてきた。日本の巨大産業が業態を時代に合わせて変化させていく中、誕生から現在までダイナミックな改革を行っていない巨大産業は今やパチンコ産業だけなのだ。
これまでも行政は必要とあれば強制的にさまざまな業界の改革を執行してきた。政府の成長戦略の上で、今後日本に外資が参入してくることは間違いない。パチンコ産業が娯楽産業の約40%を
占める巨大市場である以上、行政は無視するわけにはいかない。国の威信をかけて風適法の適正化・厳粛化に乗り出すことは想像に難しくない。
パチンコ産業の改革は否応なしに迫られる。もう業界内で自主規制などと言っている場合ではなくなる。いずれ日本国内だけの問題ではなくなる。数年後、必ずやってくる変革の時をただ待っているだけでいいのだろうか。行政指導ではなく、業界主導での改革を行うべきだ。パチンコ産業に課題を先送りにしているような時間はもう残されていない。

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